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「なんで、女の魔獣の料理人として、受けなかったんだ?」
諦めて、蜂蜜たっぷりのドーナッツを、モグモグ食べながらルルフに話しかけるルークス。
「……念のだよ。料理の知識がありすぎても、目立って、貴族に目を付けられて、城にずっと料理させられたら、帰るに帰れなくなるから」
「回りくどいことしたら、余計に怪しまれると思うけど?」
「だって、料理の知識がない調理場に居たら、私は、耐えられないわ」
嫌だ。絶対嫌だと首を横にブンブンと振る。ルルフは、料理が好きなのだ。だけど、ルルフだけじゃなく、街の皆も料理は、それなりに出来る。
殺されないためでもあるけど、料理はルルフほど、熱心じゃない。そのキッカケをつくってしまったのは、小さい頃に、勇者の料理のほぼ、落書きの切れ端レシピを、
親が仕事の旅で偶々、洞窟で雨宿りしていたら見つけたのだ。
それは、ポルト(ジャガイモ)を細く切って揚げた物に、チヨコレイト(チョコレート)を付けたお菓子のレシピだった。
あまりにも美味しくて、料理は奥深いものだと小さきながら感じたのだ。それからというもの、美味しい物を食べるために、一から果実となる食材を自分で育てたり、山に行ってツカ(シカ)を狩ったり、山菜採りに行ったり。
季節によって、同じ食材でも魚だったら、卵を持った雌の魚の方が質が良かったりする。
育てていた。野菜の一つのポチャ(カボチャ)は、旬は夏だけど水分が抜けて熟して甘くなるのは、秋や、冬。
保存法を調理法方で工夫したりと、独学で学んだ事を、村内だけに熱心に広げた。大人は、子供の遊び半分だと最初は考えてはいたが、彼女の料理が上達するのと、無意識に村を豊かにする事に、気づいてはなかった。
ただ、独学だけじゃ無理難題もある。欲を持ちすぎれば、実を滅ぼす。けど、空白のレシピをどうしても読みたい。それさえ出来れば、心残りもなく、村に戻ることが出来る。
「……ルルフって、料理バカだよね」
「なにか、言った?」
「別に……」
ルルフの所の牧場ミルクを、ドーナッツと一緒に食べ飲みながら、
旅は道ずれかと……心の奥底とルークスは、呆れながら馬車の外の景色を眺めていた。
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