勇者のレシピ

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 暫く、何気なく馬車が普通に走らせていると、  休憩場と使ってる街が見えてきた。  自分達人間は、何ヵ所かの仲間の街を行き来して、魔物の魔獣達に、足取りを掴めないように、情報交換をしながら、旅をする事にしている。  嬉しそうに、街を眺めていると、街内から、銃声のバーンっと鳴り響く音が聞こえた。 「何事だ?」 「えっ?」 「お祭りか、なにかしてるのかな?」  馬車には、ルルフ達の他にも、都会の街へ向かう組が乗ってたので、馬車の中から、不思議そうにしていた。 「私、見てくる」 「ちょっ! ルルフ!」  馬車の中が見えないようにしてる、布を捲って、生い茂る草木の地面にルルフは降りる。  街へと急いで向かって走っていく。 「大丈夫!! 直ぐに様子を見て戻るから!! 皆は此処にいて!! もし、危なそうなら馬車走らせて良いから!!」  一人駆け抜けていくルルフ。もしかして、魔獣にこの街がバレたのだろうかと、警戒しながら忍び足で走る。  そして、また、銃声の音が聞こえる。近くだ。 「うわぁぁああっ!?」 「やめて!! た、助けてぇええ!!」 「嫌だ!! 嫌だ!!」  案の定…………、人が魔物に襲われてた。  叫び声を上げながら、無理矢理捕まえられて、檻に入れられる者。抵抗はしたけど、殴られたり、銃で脚を撃たれたりする者。脚をうったのは、直ぐには殺さない為だ。 「……うっ……何故バレた? この村だって十分田舎で、此処まで来る道のりは、相当な筈。国が動くにしても……何かない限り……」  茂みに隠れながら、痛々しい街の状況に、どうにか出来ないかと思ってた矢先に、人の子供を抱え連れて走ってくる魔物の魔獣が走ってきた。 「そこをどけっ!!」  ルルフに向かって来る魔獣。無理にでもルルフを押し退けて進もうとするので。 「魔物防犯スプレー!!」  荷物の中の一つの、魔物に一時的に怯ませる事の出来るスプレーを吹き掛けた。魔物スプレーとは違うやつ。 「うわぁああっ!!?」  黄色い色のスプレーの煙を掛けられて、苦しそうに眼を手で覆い抑えてる。どうやら、眼にスプレーがかかったらしい。 「ほら!! 早く逃げるよっ!!」  その間に、地面に離された自分と同じ人の子。  その子を連れて逃げようと、その子に駆け寄った。スプレーが効いてるうちに、腕を掴み逃げ出そうと走り出した。 「離して!! 離して!! サンカ!! 大丈夫?」  ルルフの掴んだ腕から逃げるように走って、魔物の元に何故か駆け寄っていく。どうしてか、わからないルルフ。 「だ、大丈夫。こんなの、どうってことない。それより、お前は逃げろ!!」 「サンカを置いて行けないよ!! 一緒に逃げようよ!!」  そういえば、自分も魔物の姿に変身したままだった。それで警戒したのかもと……考えたが、相手も魔物の魔獣。  尖った耳、鋭い牙とキリッとした青い眼、綺麗な銀色の毛並みの相手。モフモフしたら、結構気持ち良さそう……なんて、考えてる暇なんてない。  どういうことだろうと? 少し脚を止めていたが、そんなのんびりしてる暇もない。 「揉めている所悪いけど、早くしないと他の魔獣が気付い」  たら、危ないわ……と、喋り終えない内に、相手のサンカという名の魔獣が、大きな肉体で、ルルフの肩を掴み青々と生い茂った地面に押し倒し、上乗りするように、身体を覆い被った。 「逃げろっ! ワタム!! この魔物は、俺が食い止める!! おやっさん達のためにも、行けっ!!」 「……サンカ……、ごめんっ!!」  眼がまだ、あまり回復してはない状態だが、ルルフを押し倒すぐらい相手には、簡単に出来る。ワタムと呼ばれる子に叫ぶなり、その子は、涙袋に涙を溜めながら走っていった。 「ちょっ!? まっ、待って!!」  勘違いしてると叫ぶ暇もなく、地面に大の字になるように身体を押し倒されて、相手の魔物のサンカは、ルルフに、唸り声を上げていた。 「人を殺るのは、始めてだが……。ワタムを追わせないためだ。悪く思わないでくれ」  そう伝えるなり、ルルフの首筋を片手で掴むと握力で、首を絞める。もう片方は、逃げないように身体を押さえ付けている。  ぐっと力を込めて、ルルフの言い分も聞かずに、相手は本気で殺すつもりだ。
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