勇者のレシピ

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「や、やめ……、は、はな……しを」  あの子の為に、この魔物は、私を殺そうとしてる。この魔物悪い人じゃない。けど、息が苦しくて話が出来ない。 「……これで、他の魔物達と同じ様に、汚れた人殺しになってしまうのか」  少し涙を浮かべて、ルルフを見つめる。事情はあるかもしれないが、今、泣きたいのは此方だ。  そう彼女も相手も思った。  それに、相手も人殺しに自分は、なりたくはないと思っているのか、絞め付ける事に躊躇するような哀しそうな表情を向けている。そんな表情をするのなら、この手をどけて欲しいと訴えるようにパシッパシッと相手の腕を叩いていた。 「だっ……だか……ら……きいてってばっ!!」  ルルフは抵抗するように、相手の魔物のサンカの胸腹に、オモイッキリ脚蹴りを入れる。 「うっ!!」  流石に蹴りが効いたのか、蹴りの痛みで、ルルフの首を絞めていた腕を緩めた。緩めた腕を隙とあらば、払い除けて、ゲホゲホと咳き込み。息を酸素を吸うために、少しハアハアと呼吸を整えた。  先ずは話を聞いて貰う為に、立ち上がるつもりだったが、相手は、そのつもりはないみたいで、  覆い被っている身体は退こうとは相手はしない。  息は出来るようになったが、さてさて、どうやって話し合いをしようか。  「じっ……自分ってバカだな……。普通に魔法の変身を解けば良かったんだ」  単純明快。人の元の姿になれば、きっと少しは警戒心を解いてくれると思ったルルフ。  魔物も魔法が使えるから、逃げるために人の姿になって油断させる事態も無い訳じゃないけど、  この状況で人の姿になったとして、不利になる行動をするなんて考えないだろう。魔物なら、頭脳より肉体戦の方が戦いやすいから。  そうと決まれば、変身を解こうと、ルルフは、自分の魔物の姿。此方もモフモフな白い耳長ウサ(ウサギの事)の姿から、相手の魔物のサンカに正体を現し始めた。  これで、相手が悪い魔物だったら、自分は奴隷。  それを覚悟の上で、変身魔法を解き始めた。 「ルルフ……大丈夫かな」  そして、時間が掛かってるルルフを心配しにルークスが、森で必死に走っていた。走るなかで、偶然ルルフを発見した。  だが、ルルフが丁度魔物の姿の変身をゆっくりと解いていく姿を、クーマー(クマの事)の魔物姿のルークスが血相変えて見ていた。  血相というよりかは、怒りに似た黒い感情を身体に纏わせてサンカを睨んでいた。 「る……、ルークス」  汗ばんだ状態で、息をハアハアと顔を赤くして色っぽくしてるルルフ。彼女の白い肌の、首に、サンカが絞めたと思われる手跡が残っており、眼が少し虚ろ。  こんなので、城の護衛が出来るのだろうか? と、いう彼女の姿にルークスは、サンカに怒りのままに向かって走った。 「な、仲間が居たのかっ!」  サンカは、ルークスの姿を警戒して早くルルフを殺らないと、二人相手はとてもじゃないが、困ると、テンパってるようで、人の姿に戻っていくルルフの方を見ずに、つい、ルルフを抱えて走っていった。  ある日。森の中。  熊さんに。出会った。  花咲く森の道。熊さんに出会った。  スタコラ、サッサッサのサッー  スタコラ、サッサッサのサー  と、歌の歌詞のように、ルルフを抱えたサンカを追いかけるように、ルークスが凄い勢いで追いかけていた。  あらルークス。  背中に。乗ってる。男の子。  今さっき逃げていった。  ワタムって子じゃない?  と、会話を入れてくれたので一先ず休戦? したように、一同は落ち着いたのだった。 
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