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№10
「そうですか? 大丈夫ですか? それでしたら予定通りの日程に戻しますか。はい、分かりました。いえいえ、はい、失礼します」
課長は電話を切るとこちらに向かって歩いてくる。
「イズミさん、カンダ君、工場でトラブルが起きて明日の会議どころではないらしい」
「そうですか。まぁ、でも早めに資料の用意ができて良かったですね」
「そう思ってくれると助かるよ。残業はなし。はぁ、それにしても集中しすぎて肩が凝ったね」
課長は頬を緩めて言う。
「はい。今日はベルでさっさと帰ります」と課長と笑いあった。横ではカンダ君もほほ笑んでいた。
18時に会社から出る。
結局、マミからの返信はなかった。少し腹が立つ。悪い人ではないのだけど、私の人権を無視しているような気がする。
マンガメイトの入っているビルの前に来た。自然に笑顔になる。
「イズミさん」
後ろから男性に呼び止められた。きょろきょろと声の出どころを探す。濃紺のスーツ姿の男性が手を軽く上げながら近寄ってきた。
「スワさん、どうしたんですか?」
「今、外回りからの帰りなんだよ」
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