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№12
私はメニューを凝視する。
スペイン料理店には初めて来た。スペイン料理なんてアヒージョとパエリアぐらいしか知らない。
「好きなものを適当に注文していいから」
「あ、はい」
ビールとお通しのナッツが2セット来る。
スワさんはナッツを口に放り込んでビールをおいしそうに飲み始めた。
乾杯しないの?
「アヒージョの具は何がいいですか?タコとか野菜とかムール貝とか」
「何でもいいよ」
「では、野菜にしますか」とワザと男性が嫌いそうな選択して、スワさんを観察した。
「野菜は嫌だな。食った感じしないし」
いやなものがあるじゃねーか!言えよ!脳内発声する。
「それではムール貝にしますか」
「貝は嫌だなー。見た目が気持ち悪くない?」
「ははは。タコのアヒージョを注文しますね」
タコしかないじゃないの、タコがいいって言えよ! 脳内発声する。
ビールに口を付けながら、スワさんの様子を確認する。
確かに見た目は良い。
スーツのセンスも良い、スッとした指の先の爪までもが整えられている。
「好き嫌いありますか?」と少しの嫌味を込めて聞く。
「特にないよ。だって好き嫌いって恰好悪いじゃん」
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