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№15
エレベーターが開くと靴底を高速でカツカツ鳴らし、通いなれた新刊本コーナーに直行する。
『神獣伯爵さまはネコの僕を離さない4』を手に取ると、表紙の美しさに体の強張りが少し緩んだ。
目の周りが熱くなって、鼻水が出そうだ。
「イズミさん」優しく男性に声をかけられた。
今の私はBLマンガを手に持って、鼻水を垂らしそうという状態だ。
見られたくない。
気付かないふりをして、カニの様に横歩きしてレジに向かおうとする。
「イズミさんですよね?」
観念して俯き加減に振り向くと、すぐ後ろにカンダ君が赤い顔をして立っていた。
「何?」低い声で聞いた。
「僕、好きです」突然告白された。
「え? は? 冗談でしょ?」顔がポッと熱くなる。
「それ『神獣伯爵さまはネコの僕を離さない4』ですよね? 今日、発売日ですね! 僕も買いに来ました。神獣様、すんごぉくキレイですよね。僕も神獣様にガッチリと調教されたいんです!」
座った眼でビシッと指差し、叫んだ。
「……!」
私は閉店準備中の店員達の視線が痛かったが、素知らぬ顔をしてレジで2冊分の会計を済ませた。
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