第二章 再開

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賑やかに夕飯を食べて、先にお風呂に入って自分の部屋で明日の準備をしていると、ドアがノックされた。 「俺だ」 「律くん?どうぞ」 部屋に入って来たのは律くんだった。 ラフなTシャツに着替えていたのでお風呂に入った後なのだろう。 「どうしたの?」 「まあ、いろいろ説明がまだだったし」 確かに、聞きたいことは沢山ある。 律くんに椅子に座ってもらい、私はベットに座った。 「……覚えてくれててよかった」 「流石に幽霊との出会いなんて忘れないって」 人を通り抜けて空中に座ってそんなことが出来る幽霊なんてインパクトが強すぎる。 簡単に忘れられるもんじゃない。 何より、 「約束したから。本当にまた会えるとは思わなかったけど」 「俺も雫のこと迎えに行くって約束、守れそうでよかった」 守れ”そう”? 律くんの言葉に首を傾げる。 迎えに行くって、なんか。 「転生っていうのか?生まれ変わってまたここに生まれて」 律くんの真剣な顔に疑問を聞くことも出来ず、黙って聞くことに徹する。 「思い出したのはつい最近だったんだ。だから、遅くなって悪かった」 申し訳なさそうに謝る律くんの手に触れれば、通り抜けることはなかった。 人間の温かさがあった。 「いいよ、別に。今会えて嬉しいから」 「そうか」 顔をあげて、律くんは照れくさそうに笑っていた。 そんな顔がすごく懐かしく思える。 こっちも照れくさくなって一緒に笑ってしまった。 「あの頃は幽霊で言っても無駄だろうと思ったから言わなかったけど」 律くんは甘い笑みを浮かべていた。 「雫、好きだよ」 少女漫画みたい。 最初にそう思ってしまった。 何だか顔が熱い気がする。 初々しい恋する少女のような自分の反応に恥ずかしくなってくる。 二十四なのに六つ下の高校生にこんなこと言われて恥ずかしくなってるとかどうなのだろうか。 でもしょうがない。精神年齢は彼のほうが年上なのだ。 「なんか、数時間前まで会えるわけないとか思ってたのにそしたらこれとかもうジェットコースターじゃん」 私の呟きに律くんはニンマリ笑う。 「もちろん、迎えに来たんだから迎えられる準備は出来てるんだろ?」 「なんの準備?」 疑問を口にすれば、予想外の答えが帰ってきた。 「迎えに来てもらってまさか会うだけなんて思ってないよな?」 「それってつまり」 何となく流れを察して私は口を噤む。 律くんはグイッと顔を近づけてきた。 「告白したんだから、返事は?」 「は、はい」 これ以外の返事がないような気がしたのはきっと気のせいではないだろう。 私は幽霊に恋をして、気づけば高校生と付き合うことになっていた。 この全く先が見えない流れに戸惑いを隠せないのであった……。
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