第二章 再開

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第二章 再開

「ただいまー」 家に帰ってもまだ時間はそんなに遅くなかった。 私は実家で暮らしているのだが、玄関に知らない靴があることに気づく。 おそらく、二つ下の弟はなさそうなので六つ下の弟の友達だろう。 リビングに入ると、お母さんが料理を並べていた。 「雫、おかえり。今日、翼の友達二人が泊まるから準備終わったら呼んできて」 「あー、わかった」 当たり。 そんな話をきいた記憶はないのだが、私が人の話をきいていないだけかもしれないのでなんとも言えない。 手洗いうがいをして、着替えるために二階の自分の部屋まで行く。 弟の部屋から賑やかな声が聞こえてきた。 夜、うるさくしなきゃいいけど。 ただでさえ寝付きが良くないのにこれ以上寝れなくなったら困る。 そんなことを考えながら自分の部屋で一通りの準備を終えて、弟の部屋のドアを開ける。 「翼、お母さんが夕飯できたって」 「姉さん、おかえり。わかった」 弟の翼は高校生になっても素直でいい子に育ってくれている。 部屋を見れば、翼と二人の男子がいた。 一人は、翼の親友のコウキくん。 幼い頃から二人は仲がいい。 もう一人は黒色の髪に雪のように白い肌で切れ長の目ーーえ? 十八年前の”あの”記憶が不思議と鮮明に蘇る。 何年もたってぼんやりとしていたはずなのに。 あっちも私の顔を見てフリーズしていた。 「姉さん?どうしたの?」 「いや、何でもない」 きっと人違いだ。 部屋のドアを閉めてふうっと息を着く。 今のは人違い、そうに決まってる。 階段をおりようとすると、ドアが開いてさっきの翼の友達が出てきた。 こちらを見る目はとても似ていた。 「雫」 どこか懐かしい声に私は目を見開く。 声変わりして低い声のはずなのに懐かしい。 思わず名前が口から出てしまう。 「……律くん」 出てしまった言葉に、彼は静かに笑った。 大して変わらなかった身長は彼のほうがずっと大きい。 顔だってずっと大人びたようになっているはずなのに。 あの頃の面影があるような気がした。 何も言わない私の代わりに律くんが口を開く。 「あのさ、後で時間あるか?」 「うん」 私のほうが年上のはずなのに何だか年下感が未だに拭えないのは何故だろうか。 でも、覚えているなら精神年齢は彼のほうが年上のはずだ。 「雫、」 律くんが何かを言おうとすると、部屋のドアが開いて翼とコウキくんが出てきた。 「タイミング悪……」 顔を顰めてそう言う律くんに私は噴き出してしまった。 その再開に私は驚きつつも、どこかで嬉しさも感じていた。
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