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Choice1・僕だけの選択肢
目覚ましの鳴る音。
ベッドから手を出し、けたたましく鳴る目覚ましを止める。
ゆっくりと起き上がり、目をこする。
カーテンの隙間から日差しが張り込んで、足元を照らしている。
丁度その足元の辺りに見慣れた3つの選択肢が現れる。
厳密には、空中に3つの文字が出現していると言っていい。
1・このまま二度寝をして店を休む。
2・起きて出掛ける準備をする。
3・店に今日は休みますと電話する。
今日は大事な日だ。
僕は迷わず2を選択する。
2という数字をじっと見つめると、『起きて出掛ける準備をする』という文字が赤く点滅した。
すると自分の意思とは関係なく、僕の体は勝手に動き出す。
ベッドから起き上がり、歯を磨き、顔を洗い、パジャマを脱ぎ、シャツとズボンを履く。
髪をセットし、腕時計をして、スマホをポケットに入れる。
その間、僕の意思というのはそこには存在しなかった。
体は動いているので、眠ることはできないけれど、すごく楽だ。
玄関に立ち、靴を履いたところで、体がようやく自分の意思で動き出す。
ドアを開け外へ。
アパートの階段を軽快に降りる。
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