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矢が屋敷に何本も入ってくるのを横目で見ていると、目の端で手下が次の矢を構えるのにもたつき、脳天に矢を射られたのが目に入った。その時、斜めに被っていたキツネの面が血飛沫に濡れていく。タクミは少し目を細めた。
そういえば最初の頃にいた、あの男はどこに行っただろうか。
気弱な癖に、タクミのようになりたいなどと語って、弓を教えてくれとしつこく頼んできて、才能もなく弱かったくせに諦めもせず弓の練習をしていた、あの男は。
まだタクミが一人で活動をしていた頃、あの男はタクミに勝負を挑んできた。
戦いに挑むのだからよっぽど強いのかと期待したのだが、タクミがあっさりと勝ってしまった。
あの時は心底呆れたし、がっかりもした。なんで弱いくせに勝負に挑んできたんだか。
タクミは、男が弱すぎて殺す気もなくなり、そのまま放置した。そうしたらなぜか付きまとわれたのだ。どうやったらそこまで強くなれるのか。弓はどう練習すれば上手くなるのかだとか。
鬱陶しかったのでタクミが何度も追っ払ったりもしていたが、諦めずにすぐに追いかけてきたのだ。さすがのしつこさに面倒になって放置していたら、いつの間にか仲間なんてものをあの男が作りだしたのだ。今、そのことを思い出した。
そういえばキツネの仮面も、タクミの目元に似ているとかであの男が最初に作ったのだったか。
「……まあ、どうでもいいか! 死んだのなら、それまでだったってことじゃん!」
思い出を打ち消すようにタクミは周りの怒号に負けない声量で言葉を発した。
顔も名前も忘れた奴のことなどどうでもいい。忘れるのなら、それだけの存在で、それだけ弱い奴だったのだ。
けれど、タクミは違う。あの男とは違う。強いし、これからも強くなる。弱かったらそこでおしまいだ。強くなることは、タクミにとって生きる事同然なのだから。
タクミはもう一度先ほど蹴った手下の死体を眺めた。もうその目に光はない。
「……俺はお前とは違うよ」
そう言って、タクミは仲間だった死体を足で踏みつけた。
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