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カグネ王国の王城には、城と連結している小さな塔を中心に花びらのように五つの塔が建てられており、その一つが医療エリアとされていた。カグネ王国では戦場から帰ってきた怪我のある徴収兵はここで治療される。その塔にスバルはいた。
白を基調とした部屋で多くの横に並ぶベッドやカート、白いカーテンが舞っている清潔感のある部屋で、スバルは一人、今にも白に飲まれそうな少女を見つめていた。
「ユキ……」
ユキが倒れた後、スバルはすぐさまユキを抱えて下山し城に戻った。
だんだんと白く染まる顔色。けれど抱える身体は燃えているかのように熱かった。
スバルはそっとユキの頬を撫でる。抱えた時の熱さは消え、今はガラスのように冷たい。今もユキが生きているとわかるのは、僅かに聞こえる息遣いのおかげだ。
疲労なんかじゃない。
何かユキの身体に恐ろしい異変が起きている。
そう理解はできるのに、見てるしかできない自分がもどかしい。
ユキの頬から前髪へサラリと手を流した後、横のベッドに目を向けると、ユキと同じようにベッドで寝ているセトウがいた。
セトウは未だ昏睡状態だ。救護班ができるだけの措置はしてくれたようだが、目覚めるかは五分五分。斬られた傷が相当深かったらしい。
セトウの胸元から見える、無数の包帯と僅かに滲む血の跡に、自身への不甲斐なさが襲った。
(俺は、また間違えた)
ユキもセトウも、こうしてスバルの周りの優しい人だけがいつも傷つく。
やっぱりだめだ。このままユキをそばにいさせるわけにはいかない。
いつまた、危険な目に合うかわからないのだから。
嫌われたっていい。失望されたっていい。傷ついて、もう本当に手の届かないところに行ってしまうより、どれほど救われるか。わかっていたのに、今回身をもって実感した。
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