第二章19 「真相と愛情」

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「それにスバル殿下」  声色を柔らかいものに変え、セトウはふっと顔を緩めた。 「こんなこと言うのは失礼かもしれませんが俺は年上で、あなたより人生経験も上なんです。つまり俺からしたらあなたはまだ子どもです。勝手するなんて、あたり前の年頃なんですよ」 「は?」  スバルは急な話題の展開に訳が分からず声を上げた。  目を丸くしているスバルにセトウはふふっとおかしそうに笑う。 「俺弟いるんですけど、危ないからやめろって言ってるのに、騎士の真似して鍬振り回してたら、俺の腹にぐっさり刺したこともあったんですから。それに比べたらスバル殿下の勝手なんか可愛いもんですよ! あっはっはっは! いててててッ」  笑った拍子に痛んだ傷口を抑えベッドで悶えるセトウに、それは笑い事じゃないだろう、とツッコんでいいのかスバルにはわからなかった。  セトウは痛みが治まり、微妙な顔をしているスバルにもう一度優しい目を向けた。 「あなたの立場からそれを許せない人はきっと多いと思いますが、スバル殿下がそうしたいと思ったことなら勝手でも何でも、それでいいんです」 「……お前ら国民を導くのが、俺の役目だ。だからこそ、俺に勝手は許されない」 「その役目を支えるのが、臣下の務めですよ。勝手して間違ってもいいじゃないですか。最初からできる人なんて誰もいないんですから」  虚を突かれ、スバルは次の言葉をたじろぐ。  スバルの前にはいつも父や兄のエイシがいた。  厳格で他者を抑制する力のある父。  人をからかいながらも周りから慕われ、決して失敗や間違いを起こさないエイシ。  父なら失敗しない。兄ならもっと上手くやった。  そんな考えがずっと脳裏にこびりついて、優秀で有能な二人を見て自分は凡人なのだと思った。凡人だからこそ、間違えてはいけないのだと。  “それでもいい”  その言葉が、じんわりと広がり身体を少し軽くする。  『王子』としてではなく、『スバル』でいることを、許された気がした。
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