第二章19 「真相と愛情」

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 子ども扱いされ恥ずかしそうするスバルの姿に、セトウは自身の過去を振り返る。  六年前、セトウはスバルに助けられたことがある。  セトウの生まれ故郷の村が飢餓に襲われ、村人たちは日を経つごとに死体となり、当時十七歳のセトウも死にかけていた。  その時、スバルが村へ現れたのだ。食料供給などの救済措置が行われ、のちの飢饉に備えジャガイモの栽培と長期保存方法を教え、備蓄させた。そして減少した人口回復の為、スバルは私財を使って都市部に集まった農民出身者に資金を与え、村への人口移動を狙ったのだ。そのおかげで村は救われ、天災が起こっても暮らしを維持できるようになった。  農民出身のセトウはどこか貴族や王族を毛嫌いしていた。自分で食物を育てたことがない人たちが、位が高いという理由だけで偉そうに自分たちを見下しているのだと、そう思っていた。  けれど、違った。  当時スバルはまだ十二歳だった。自分より年下の子どもが村を救おうと駆けつけ、臣下が制止するのを振り切り、動けない者に地に膝をついて自ら食事の手伝いをし、村人の代わりに畑を耕したりもしていた。  数か月経って、泥だらけで帰っていく後姿は今でも忘れられない。本来であれば、綺麗な服を着て、こんな寂れた村に足を踏み入れることなどない人であったのに。  この人の役に立ちたい。そう思い、体力のあったセトウは騎士団に入団したのだ。  けれど、自分などいなくともスバルは立派に勤めを果たしていて、セトウは遠目で見ているしかできなかった。やはり王子というのは、下々の助けなど必要ないのだと、そう思い始めていた。  だから年相応の子どものように悩んでいるその姿に、酷く安心した。  スバルはまだ十八歳。何かに悩んで迷ってしまう年頃だ。  きっと立ち止まったり、間違ったりすることを周りが許さないのだろう。  ならばせめて、セトウだけがこの子どもを許してあげたい。  立ち止まったら背中を押そう。  間違ったと自身を責めるなら、そうではないと諭そう。  これが、セトウがスバルにできる精一杯の恩返しだ。
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