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エマは落ち着かない様子で窓際に立っていた。
それを見てメイドのリダは小さく微笑んだ。
「お嬢様。そんなに待ち遠しいのですか」
「だって会うのは何年ぶりになるのかしら。リダ。私、変じゃない?」
真っ白なドレスの両端をつまんで見せる。
「お似合いですよ」
「心から楽しみにしている誕生日会なんて久しぶりよ。ヤンは元気かしら」
「今日、実際にお会いすればわかるのではありませんか」
「そうね。早くこないかしら」
「はしゃぐ気持ちもわかりますが、二十回目の誕生日なので淑女らしく致しませんと」
自分よりも幼く見えるリダにそう窘められてエマは反省する。
しかし浮き立つ心を抑えられないのか、窓際から離れようとしない。
そのとき、遠くから馬車がやってくるのが見えた。
「きた!きたわよ!」
門までまだまだある。
だというのに、馬車は中途半端なところで止まった。
「どうしたのかしら」
エマの呟きにリダも窓際へと近づく。
二人して外の様子を眺めていた。
馬車から二人の男が降りてきた。
一人はヤンだろう。
ではもう一人は?エマは疑問に思った。
今日の誕生日会にはヤン一人しか招待していない。
その彼は、貴族ではない。使用人を雇うような身分ではないのだ。
「誰なのかしら」
また呟く。リダが険しい顔をしていることに、エマは気づかなかった。
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