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ーーあなたがまだ幼いころ、私は賞金稼ぎに追われてこの屋敷に逃げ込んだの。
ちょうどあなたの誕生日だったわね。
血を欲していた私には最高の餌番だった。
屋敷にいるもの全ての血という血を吸い尽くしたわ。
ああ、あなたは生かしておいてあげたわね。
色いろと役に立ちそうだったから。
疑問に思ったことはない?
何で私というメイド一人しかいないんだろう?って。
疑問に思うわけないわよね。
そう暗示をかけたのだから。
あなたが魔のものーー吸血鬼であるようにしたわ。
誕生日会と称して贄を屋敷に招いていたわ。
血を啜ったの。幾度も幾度も。
あなたはその都度、ヤンがきていると思い込んでいたわね。
「でもまさか。あのときの生き残りがあなた以外にいたなんて想定外だわ」
リダは未だに気絶したままのヤンを見る。
「本人じゃないのは確かね。ヤン自身なら、老いぼれじゃないと辻褄が合わないし」
「じゃあ、私が老女だというのも本当なの?」
「そうよ」
「何でそんなこと」
「暗示が切れかかったときに、あなた死のうとしたのよ」
「え」
「せっかく餌番を見つけたのよ。そう簡単には手放したくないじゃない。瀕死の状態を助けてあげたんだから感謝して欲しいわ」
エマの脳裏にリダによって死んでいく人たちの顔が浮かんだ。
みんな、恐怖に顔を歪めていた。
助けを呼んでいた。
それなのに、自分は何もできなかった。
立ち尽くしていただけだった。
「いや、いや、いや!」
両耳を塞いで頭を振る。
犠牲者たちの声が聞こえてくるようだ。
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