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「あなたはヤンの孫だったのね」
「騙していてごめんなさい。ミス・エマ。僕はギーといいます」
三人は応接間のソファにそれぞれ座り、話している。
寝間着だったエマは軽く上からブランケットを羽織っている。
その端を掴み胸元に手繰り寄せた。
「祖父から話しは聞いていたんです。何度かあなたを助けに行こうとしたが、怖くて動けなかったと言っていました」
「そこで俺の出番ってわけ。話しただろう?ヤンが襲われているところを助けたってさ。そこで正式に依頼されたのさ」
「そう……なのね」
エマはうつむく。
「この先どうしたらいいのかしら」
誰に言うでもなく呟く。
「こんな歳だけ重ねて……一人ぼっちになっちゃったわ」
「ミス・エマ。これを」
「手紙?」
エマはギーから手紙を受け取る。
「祖父からです」
「ヤンから」
レターオープナーは部屋にある。
戻る時間も惜しい気がして、手で開けることにする。
期待か不安か。その両方かもしれない。
エマの手は震えていた。
手紙をひろげ、読み始める。
文字を目で追う内に瞳から涙がこぼれ落ちてきた。
『親愛なるエマへ』から始まるそれは、『友の危機にはどこにいても駆けつけるよ、とは言っても今回は孫に行かせてしまったけどね』と締め括られている。
封筒の裏に記された『永遠の友ヤンより』という文字を指でなぞる。
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