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門までくると、アルは振り返り屋敷を見た。
「友達、か」
彼には大切な友達がいた。
お互いにまだ子どもだった。
相手は人間だった。
毎日のように野山を二人で駆け回り、遊んだ。
それがある日を境にパタリと姿を現さなくなった。
自分が魔のものだからだろうか。
大人たちに止められたのかもしれない。
アルはそう思った。でも違った。
こっそり様子を見に行った彼は、そこで惨劇を目の当たりにする。
村人全員が死に絶えていたのだ。
その中の一人に駆け寄ると傷口を見た。
そこから流れ出る気から犯行に及んだのは、魔のものだとわかった。
友達の姿も探した。
もしかしたら、生きていてどこかに隠れているのかもしれない。
助けを待っているのかもしれない。
そんな一縷の望みをかけて探した。
しかしーー。
以来、彼は魔のもの専門の賞金稼ぎになった。
蛇の道は蛇。
流れ込んでくる情報をたよりに今日も狩った。
リダは求めていたものとは違った。
村人のーー友達の死体には三本の爪痕があった。
力を誇示するような痕だった。
当時を思い、アルは自嘲気味に笑った。
「マナ。ごめんな」
敵をうつと決めている。
明日もまた、彼は同族を狩るだろう。
最後にもう一度だけ屋敷の全貌を眺めると、今度こそあとにしたのだった。
〈終〉
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