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「久しぶりね。元気にしていた?私は見ての通りよ。今日で二十回目の誕生日になのに、落ち着きがないって言われちゃうくらい」
「『駒鳥のお葬式』ごっこをしたの覚えている?ヤンったら死体役なのに、途中で笑うんだもの。全然、遊びにならなかったわよね」
「ヤンが昔、私に言ってくれた言葉を覚えている?友の危機にはどこにいても駆けつけるよ、って。嬉しかったわ」
興奮気味に話すエマに対して、ヤンは短く返すだけだ。そこで悟る。
「もう昔のことだものね。忘れてしまってもおかしくないわ」
潤みそうになる瞳。唇を僅かに噛みしめて耐えると、笑顔を向けた。
「ちょっと歩いてくるわね」
ヤンが追ってくる気配はない。
それがやけに悲しかった。
バラに触れようとして、やめる。
刺が己を拒絶しているように感じた。
「やあ。ミス・エマ。一人なんですか?ヤンは?」
気分が沈みかけたとき、アルが角から出てきて声をかけてきた。
「ベンチにいると思うわ。それよりも、その〝ミス〟呼びはやめてくれると嬉しいのだけど」
バカにされている気がするの。と、言外に含ませる。
「了解。エマ」
言葉まで砕けさせて、アルが笑う。
牽制することで距離を作りたかったのだが、かえって縮む結果となった。
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