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「ねえ、アル。ヤンはいつもああなの?」
「ああ、とは?」
「私の知っている彼は、もっと活発だったわ。面影は確かにあるけど、まるで別人みたい」
「男も女も思春期を過ぎれば別人にもなるよ。俺が知っているヤンはまた、口だけは達者だけど」
「その口すらないように感じるわ」
まだまともにヤンの声を聞いていないように思う。
短く小さな声は聞き取りづらい。
アルの言うような人間にも思えなかった。
「ヤンとはいつごろからの知り合いなの?」
「ごく最近だよ。実は俺、魔のもの専門の賞金稼ぎをやっていてさ。ヤンが襲われているのを助けたのがきっかけで仲良くなったんだ」
「……え」
エマは小さく声を漏らす。
思わずまじまじとアルを見てしまう。
魔のもの専門の賞金稼ぎ。心の中で復唱する。
「どうかした?」
アルの探るような瞳にたじろぐ。
無意識の内に胸元を握っていた。
「お嬢様方。お茶の用意ができました」
天の助けとも思えるタイミングでリダがやってきた。
逃げるように彼女のもとへと行き、その背後に身を寄せる。視線は足元へと向く。
「リダ。二人をもてなしてあげて。私はちょっとだけ自室に戻るわ」
「エマ!」
呼ぶ声に肩を揺らす。恐る恐る顔をあげる。
「またあとで」
アルは笑顔で言う。その表情がとても怖かった。
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