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鏡台の前に座るも、すぐに立ち上がる。
窓際に行き、次にベッドに腰掛け、それでも動悸は治まらない。
エマは自室に戻ってからも落ち着かなかった。
今度は室内をうろうろし始めた。
控えめなノックの音がする。
大袈裟なぐらいに身体が跳ねる。
もしアルだったら……そう思うと怖かった。
「……はい」
絞り出すような声を合図にドアが開く。
「お嬢様。大丈夫ですか?」
姿を見せたのがリダだと知ると、身体から力が抜けた。
「聞いて、リダ。アルは賞金稼ぎらしいわ。しかも魔のものを専門としているんですって」
リダの眉がピクリと動く。
部屋に入り、ドアを閉める。
「私を狩りにきたんだわ。噂を聞いたって言っていたわよね?町の人たちに吸血鬼と呼ばれているのも知っているんだわ」
「安心してください。私がお守りしますから」
リダは自身の洋服のボタンを外すと、首を露にした。
「私の血をお飲みください。今のお嬢様は気が動転しているのです。先ずは落ち着いてください」
「でも」
「全てお任せください」
さあ、とさらに襟首をひろげる。
エマは、ゴクリ、と喉を鳴らす。
リダに近づくと首筋に顔を埋めた。
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