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中庭にある柱に寄りかかるアルを見つけると、リダは早歩きで彼に近づいた。
「お嬢様に近づくのはおやめください」
目の前までくると、硬い声で言い放つ。
アルはニヤリと笑うと、彼女のあごを掴む。
そのまま、上に向かせた。
「君に近づくのはありなの?」
手を払うと、きつく睨む。
「賞金稼ぎには、不埒な輩が多いと聞きます。その噂ーーあながち間違いではないようですね。とにかく、お嬢様に指一本たりとも触れさせませんから」
一気に言うと、くるりと背を向けて室内に戻っていく。
その後ろ姿にアルは手を振っていた。
「首筋に穴二つ……ね」
▽
誕生日会は散々だった。
あんなに楽しみにしていたのに、自分を見るアルの目が怖くて食事すらもままならなかった。
相変わらず、口数の少ないヤンのことも憂鬱さに拍車をかけていた。
何よりーー。
ベッドに横になりながら、数時間前のことを思い出す。
「お客様方。今晩は泊まっていきませんか?」
「リダ?!」
「いいのかな?」
アルがエマを見る。
反射的に顔を逸らす。苦笑する声が聞こえた。
「……ゆっくりしていって。リダ、あとのことは任せたわ」
「はい。お嬢様」
回想から現実に戻ると、ため息を吐いた。
リダが何を考えているのかわからない。
しかし彼女に任せておけば安心だという確信があった。
寝返りを打つ。ドアがわずかに開いている。
閉め忘れたのかしら。
この屋敷には、賞金稼ぎがいるのよ、気をつけなくちゃ。
起き上がると、ドアを閉めに立ち上がった。
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