還ってきた彼女

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 荒れた日のことだった。  台風の接近の影響で、外は朝からどんよりとしており、時折風がびゅうびゅうと木々をしならせていた。  それでも夏休みということで僕は友達数人とボウリングを楽しんでいた。あれはちょうどターキー目前という時だった。突然、友達の一人がスマホを耳につけて小さく悲鳴を上げた。聞けば友達の知り合いが交通事故で亡くなったという訃報で、夜に行われる通夜へ来てほしいという連絡でもあった。  盛り上がっていたムードは一気に重くなった。まるで今日の荒れた天気のようだ。ボウリングをつづける雰囲気でもなくなったので、僕たちはその場で解散することになった。雨が降らない間に帰ろうと思ったけれど、先ほど連絡を受けた友達が気がかりで、僕はその友達と帰ることにした。  本当は友達を家まで送ったら帰るつもりのはずが、気づけば僕も通夜に参列していた。夜になると風と雨脚は強まり、空が怒り狂うように唸っていた。そのせいで通夜に来ている人はほとんどいなかった。僕は友達と並んで遺族である家族に目礼した。母親は声を殺して泣いており、父親は小さく会釈を返した。隣に座っている男の子は弟だろうか、まだ状況が理解できないようでお人形を持って遊んでいた。  僕らは一歩前に出る。そこで僕は初めて故人と対面した。遺影の彼女は暗めでブラウンの髪が肩まで伸びており、学生服を着ていた。知り合いとは聞いていたが、同年代とは思わなかった。そして何より印象的だったのが彼女の笑顔だった。白い歯で下唇を噛む笑顔から活発な印象がうかがえた。  友達が遺影に向かって合掌するので、僕も手を合わせた。きっと隣の友達は色々話したいことや聞きたいことを伝えているだろう。しかし、生前の彼女を全く知らない僕には彼女との思い出がない。彼女が死んだのかどうかさえよく分かっていなかった。それでも何も言わないのは失礼だと思った僕は「君の友達の友達ですが、どうか安らかに」と心の中で伝えた。  友達と別れて家へ戻る間、どうしても彼女の笑顔が頭から離れなかった。
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