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谷原に標的を絞った乙竹は、徹底的に彼の周辺を調べ出した。
彼の預金口座の取引履歴の開示請求をし、定期的な出金を確認した。
さらに瑞野の母親の口座から、同額の定期的な入金を確認し、アトリエに使用料という形で賃貸関係があったことを証明した。
認めた母親を説得し、今度は谷原に対する被害届を警察に提出させた。
さらに谷原が斡旋し、漣の身体を提供していた“客”たちとのメールのやり取りも開示請求により突き止め、その際に使用された隠語の意味の解読までやってのけた。
驚くべきことに十人以上もいた客の全員とコンタクトを取り、乙竹という弁護士の介入に恐れおののいた客と取引をして、売春の詳細を聞き取った。
そして谷原にコンタクトを取らせ、その会話を録音させた。
全ての証拠を谷原に掲示。
そこには、久次が密かに録音していた美術館のレストランでの会話も追加された。
彼を追い詰め、示談成立という形で、母親に被害届を取り下げさせた。
彼に慰謝料300万円を即金で瑞野の母親に払わせ、さらに裁判所に保護命令の申し立てをし、谷原が瑞野家に接近できないようにした。
ここまでで丸4日かかったが、それでも乙竹は全ての他の仕事を投げ出し、急いでことに及んでくれた。
今回のことで唯一の救いだったのは―――。
瑞野の母親にまだ良心の呵責が残っており、養子縁組の届書の裁判所への提出を渋っていたことだった。
きっとここから、彼らは再生できる。
久次は、ことが終わって、泣き崩れながら久次に頭を下げる母親を見つめ、そう思った。
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