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「………こえええええ」
漣はわざと声を間延びさせて笑った。
福島駅、新幹線改札のそばの待合室には、大型のテレビと発着モニターの他に、郷土品展示コーナーがあり、そこに所狭しとこけしが並んでいた。
「鳴子こけし……なんて読むんんだ…?なきここけし?」
尚も呟きながらガラスケースを見つめる。
『鳴子こけしの最大の特色は、首を回すと「キュッキュッ」と音が鳴ること。
肩が張り、中央に向かって細くなり、裾に向かって再び広がった安定感のあるシルエットが特徴です。
山村の子供たちのおもちゃとして愛されてきたこけしは、時代の流れとともに土産品として売られるようになり、大人の趣味観賞用として発展していきました』
視線を上げると、ガラスケース脇に展示品とは別に、お土産用として小さな鳴子こけしが並んでいた。
その上にキーホルダーもぶら下がっている。
『ちゃんと音が鳴ります!』
POPを見ながら、試しに一つを手に取って首を鳴らしてみる。
キュッキュッ。
「はは」
漣は笑いながら、こけしの顔を覗き込んだ。
切れ長の眼。
無表情なのに、どこか優しい顔。
まるで久次みたいだ。
漣は通学鞄を背負い直すと、財布を取り出してレジに並んだ。
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