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「スマホがそう呼んでるのに、俺が呼ばないのはおかしいよな」
なんですか、その、ずっと考えてたセリフを機械的に言うみたいなぎこちない感じ。
「スマホが呼んでるんだから、俺も呼んでいいだろう。
……唯由って呼んでいいか」
プロポーズしてくるくらいの感じだった。
いや、宿でプロポーズしてきたときより、何故かガチガチだ。
っていうか、すでに一度、弾みで呼んでますよ、と思いはしたのたが、その真剣な表情に笑いながら泣けてきた。
この人はいつも真剣で、そのくせ、いつもなにかがおかしい。
「旅行に行ったとき」
うん? と蓮太郎がこちらを見る。
「雪村さんと出会ってから今までのことが走馬灯のようによぎったって言ったら、雪村さん、短い走馬灯だなって言いましたよね。
……でも今、私は、その走馬灯で思い出す日々が、誰と過ごした日々より長くなることを願っています」
お母さんもお義母さんも、お父さんと出会ったときは、別れるなんて思ってなかったと思う。
ちょっとした行き違いや意地の張り合いで別れてしまった。
「ちゃんと思ってることは、全部言いますね。
あなたを好きだと思う気持ちのすべてが伝わるように――」
蓮太郎は唯由を見つめ、そっと身を乗り出し、キスしてきた。
「蓮形寺……。
俺も全部言うよ。
嬉しいときも、腹立ったときも。
お前と出会えてよかったと、この先、きっと何度も思うと思うが。
そのときも――
恥ずかしがらずに全部言うよ」
「……雪村さん」
唯由は蓮太郎を間近に見つめて言った。
「好きです」
「俺もだ」
「……言いたいこと、全部言ってもいいですか」
「ああ」
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