足掻けば足掻くほど

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足掻けば足掻くほど

組み敷く女が嬌声を上げながら乱れる様を見下ろしながら、冷めていく自分の心とは裏腹に体だけは反応する。 女の中にある自分を突き上げ出すものを出し女から、体を離すと後処理をしてシャワーを浴びスーツを着て約束通りに女に薬を飲ませてという一連の行為。女に自分の名前を呼ばせた事もなければ、相手の名前を呼ぶ事もなくただの行為でしかない。 今までは、それなりに自分も楽しんでいたのに沙羅に出会ってからは、罪悪感を感じ付き合っている訳でもなく告白すらした事も無い沙羅の姿がチラつく。 「どうしたんだ俺は。」 服部の運転する車で独り言を言うと服部は呆れた声で、 「いい加減に彼女が好きだと認めたらどうです?」 といいやがった。 「俺が女を好き?ありえないだろう?」 「何故です?」 「今まで女を愛した事は無いんだぞ。」 「だから、これからも無いと?」 そうは言い切れないでしょ?と言われてしまえばそうだが、だからどう行動していいか皆目わからない。 「無理やり女を抱いて、彼女を忘れようとしたのですか?」 別に女が欲しいとも思っていなかったが、誘われたから女の誘いに乗った。 どんな条件でも抱いてくれるならと言うから・・一度他の女を抱けば沙羅の事は忘れるかもしれないと思ったが、余計に彼女の姿が鮮明になって苦しいだけだ。 沙羅の存在はまるで茨のように俺を締め付ける。 「社長は、今まで女を口説いた事は無いでしょう?」 「ああ、無いな。」 今までそんな事は必要も無かったから女を口説く事を俺は知らない。 「もう恋愛小説でも読んで勉強なさってはどうです?そこに用意してありますから。」 服部は、妹に借りてきたという恋愛小説を数冊、後部座席に紙袋にいれて置いてくれていた。 「妹が言うには、女性はこの様な本の様に誘われたい愛されたいと思うらしいですよ。」 「へーっ。」 一冊本を取り出して読み出すが、男が言うセリフがありえないくらい甘い。 こんな砂糖菓子みたいな言葉を言って欲しいと女は思っているのか? 「歯が浮くようなセリフだな・・。」 「まあ、小説ですからね。」 参考までですよと服部は、笑いながら言うが本当にこんな言葉を言う男の気がしれないとこの時はそう思っていた。 そんな俺が、本当に一人の女に必死になるなんてこの頃は思いもしなかった。
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