第1章 人間なのに知らないの?

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第1章 人間なのに知らないの?

「あぁー、明日はやっと休みか」  深夜一時、ワンルームアパートの自室で一人、やや大きなため息とともに声を出す。  一人暮らしをするようになって、ひとりごとが増えた。  別に悪いことだとは思っていない。  今日は職場の同期と飲み会に出かけ、いつもより多めに酒を飲んだ。  楽しい酒の席だったはずだが、家に帰りながら自分の仕事ぶりを改めて振り返ることになり、テンションはすっかり下がってしまっている。  旅行代理店に就職して三年目を迎えた僕だが、僕の業績はあまり(かんば)しくない。  仕事は楽しいし、やりがいは感じているので、仕事に不満を持っているわけではない。  ただ単に、仕事がうまくいっていないだけなのだ。  今日の飲み会も、企画が通らなかった僕を励ますことと、企画が通った同期を祝福することを兼ねて行われたので、肩身の狭い思いをしていたのだ。  そりゃ同期の活躍は嬉しいし、自分ももっとがんばろうと思うのだけど、どうしたって落ち込みはする。  僕はそんなにメンタルが強いほうではないのだ。  そんなわけで、終電で帰ってきた僕は、とりあえずシャワーだけ浴びて、他になにをするでもなく、今日を終えようとしている。
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