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今確認している『敵』は二人。装備や身のこなしを見る限り、ただの愉快犯ではない。
ここはカラオケボックス。たまたま居合わせた俺と優が交戦中だが、こいつらの、本当の狙いはなんだ?
「もしかしてなんだが──標的は他にいるのか?」
黒ずくめからの返事はない。代わりに手にした警棒で、藤井に殴りかかってきた。身をひねりそれをかわす。
「おっととぉ。殴られた腹いせか? 標的が俺たちなのか? もしそうではないにしてもだ、そんな格好で立ち塞ぐてめえらに非がある、そうだろう?」
振り下ろされた警棒を、両手に絡みつけたネクタイで受け止める。
おそらくスタンガンの類だ。素手で受けたら、電気ショックで昏倒してしまう。
「おらぁ!」
がら空きになった腹部に蹴りを叩きこむが、よろめいただけで、大して効いた様子もない。
「まいったな。火もつかえねえし、この雨だ。アンタも風邪、ひきたくねえだろ?」
水びたしになったタバコに傷心しつつ、藤井が提案するも、『敵』は構わず警棒を構えた。
「なんだよ、一言くらい返しやがれ。それとも何か? 拳で語り合おうって、そういうことか? 人間はなぁ、言葉を交わさねえと絶対に分かり合え──」
一瞬のスキをついて、黒づくめが藤井の襟首を掴むと、力任せに通路に転がした。
追撃のスタンガンは身を捻ってかわすが、立ち上がった際、体当たりを受けてルームの一つに転がり込んでしまう。
先ほど優が始末した、カップルに偽装した刺客の部屋だ。
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