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「もし情報だけ聞いてズドンなら、俺の『組織』が黙っちゃいないぜ? いいかい、これは交渉さ。ギブ&キブでもなければ、テイク&テイクでもない。俺は逃亡をギブ、情報をテイクだ。オッケィ?」
「あら、give and takeなの? あなたのギブは、give upのギブだと思ったけど?」
「……く、くくくっ、ははっ。ああすまないっ、思わずツボってしまった。うまいこと言うね。俺と君は感性が似ているのかな、素敵な恋仲になれそうな予感がするよ」
「冗談。アンタみたいなペテン師と恋仲なんて、どこかの『組織』と全面戦争になったほうがマシよ」
「俺がペテン師だって? はてさて?」
「分かっていてトボけているなら、そういうところよ」
電話のこちら側と向こう側で、どちらがともなく、ふふっ。と含み笑いを漏らす。感性が近いというのは、案外、見当違いではないのかもしれない。
「そんなペテン師から、一つ助言だ」
「どーぞ?」
「『仲間』とは、家族でも親友でもない。故に誰が敵か分からないのもまた『仲間』さ」
「それは助言? それとも忠告?」
「受け取り方はどうとでも。俺もキミも、そういう世界を生きているんだろ?」
優はたまらず苦笑する。
「ご高説はありがたく拝聴するけれど、今は道徳の時間じゃないの。引き金に指はかかってんのよ?」
「オーライ。では聖子ちゃんの場所だ。港近くのスクラップ工場で引き渡す手筈になっていた。検索するとナビにも出るよ、すぐに分かる」
「裏稼業の人間って、いつもそういう場所を選ぶのね」
「人目につかないし、都合がいいからさ。特にスクラップ工場は何かと処分するのに都合がいい」
……なるほどね。
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