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◇
小さくなったタバコをはじき、靴底ですり潰していると、見知った顔が歩道橋を降りてきた。
「よぉ、無事だったか」
手を上げて呼びかける。
「ぱぱっ」
「藤井様、ご無事で何よりです」
優、暁、藤井が合流した。
「……暁、聖子は?」
「申し訳ございません。不覚をとりました」
藤井は一瞬眉をしかめ、ぐっ。と拳を握りしめた。
「博之さん、悪いのは暁さんじゃないんだからね?」
「んなこたあ分かってる。俺はアイツの保護者じゃねえ。ただな、腹が立つんだよ。護るモンが護れねえ、自分にな」
誰がともなく、ため息とも深呼吸ともつかぬ吐息を漏らした。
「──二人とも、どう思う?」
切り出したのは優だった。
「何がだ?」
「敵の狙いよ」
「まあ十中八九、俺たちだろ。小規模だがあの武装で、カラオケボックスの上がり(売り上げ)を狙ったわけはねえ。やるなら銀行か宝石店だ」
「宝石店、でございますか?」
「足がつきにくいからな。宝石なら裏でさばきやすいし、海外でも使えるだろ?」
藤井の風貌で語られると、まんま本職のソレだ。
優は同意も否定もせず、話を続ける。
「標的は本当に、あたしたちだったのかなって」
「他に心当たりでもあるのか?」
「急な襲撃で私たちは分断され、それぞれに相手が立ち、行く手を塞がれた」
手のひらを合わせ、その真ん中で親指をぐるぐる回し、思考を整理しながらつぶやく。
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