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数日後のことだった。
なにやらまた思い詰めた顔で山川が町田のデスクにやってきた。
「所長…御相談があります…」
「ん?どうした?」
あまりの深刻な顔に、作家でも怒らせたのか、とヒヤヒヤする。
「ちょっと今日の夜、お時間頂けますか?」
「なんだよ、嫌なことなら早く言って欲しいんだけど!」
町田は、作りかけていた書類を保存して、パソコンをパタンと閉じる。
「あ、いや、そんな嫌な話では…。いや、どうやろ…?」
自分でもよく分からないらしい。
とりあえず、夜、食事に行くことになった。
_____
「お疲れ様です!」
カチンと杯を合わせ、ビールを煽る。
「はぁ…美味っ」
町田は、大阪の居酒屋が随分と気に入っていた。
もちろんチェーン店なども多いけれど、探せば安くて美味い店が多く、競っているのか、サービスも良い。
この店も突き出しが3品も出てきて、なんならこれだけで呑めるな、と町田は煮込みを摘んだ。
「で?どした、青年」
美味い煮込みを食べて、上機嫌の町田は、目の前で少し沈んでいる山川を見た。
さっきからあまり話さない。
「あの…少し話しにくいので、隣に座ってもいいですか?」
「ああ、構わないけど?」
四人がけのテーブルに二人で向かいあっていたのだが、山川は町田の隣に移動してきた。
「あの」
騒がしい店内でも聞こえるように山川は、町田の耳元に口を寄せる。
「うん」
「俺…町田所長のことが……」
「え?」
「好き…です…」
町田は、固まってしまった……
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