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髪は、ボサボサではあったけれど、生まれつきなのだろうか、金色に近い茶色をしている。
同じように色素の薄い眉と、大きな茶色の瞳は、日本人離れしていて、引き込まれそうになる。
肌は透き通るように白く、触れたらすぐに跡が付きそうだった。
「まぁまぁ、入って」
「お邪魔します」
50帖はありそうなリビングのど真ん中に大きな作業机が置いてある。
周りには、沢山の画集が積まれていて、キャンバスも立てかけてあり、机の上には、画材がペン立てにビッシリと立てられていた。
「広いですねぇ…」
ほぉ…と感心して町田が言うと「そやろ、俺、売れてるからな」と謙遜することなく中河原は言って笑った。
「最初はな、姉ちゃんとこの子供に描いたってん」
美大生やったし、と中河原はソファに座ってシュークリームの包装をピリ…と破きながら言った。
「そうなんですね」
町田が立ったまま聞いていると「まあ座って」と隣をポンポンと叩かれた。
町田がソファに座ると「食べる?」とシュークリームをひとつ差し出された。
甘いものは、少し苦手だったけれど「ありがとうございます」と受け取る。
「でさ、その描いたったやつがいい出来やったから、姉ちゃんが勝手に絵本大賞みたいなんに応募したら、大賞に選ばれてしまって」
よく覚えている。
あの時、彗星のごとく現れたという表現が使われていた。
「でも、先生。とても美少年なのにメディアに出ないんですね。どんな方なのかと思っていました」
町田は、素直な感想を言う。
「あー、それな。よく言われるねん」
アイドルなったら?とか、と中河原は笑う。
確かにアイドルにもなれそうだ。
「いや、めんどくさいやん?顔出てさ、もし、ややこしいファンとか付いたら追いかけられたりするんやろ?怖い、怖い」
「あ、なるほど」
よく新作が出ると、サイン会をする作家も多いけれど、そういうのは一切断っている、と聞いた。
「まぁ、色んな人がいますからね」
と町田は同意した。
「あー、やっぱりシュークリーム美味いわぁ」
パクパクと食べる中河原を見て、釣られるように町田もシュークリームの袋を開けた。
カスタードと生クリームが2層になっている。
最近のコンビニスイーツは、ほんとによく出来ているな、と思う。
「で、今日来てもらったのはさ」
あっという間にシュークリームを食べ終えて、中河原は町田を見た。
「はい」
町田は、居住まいを正す。
「町田さん、俺の相手出来るん?」
「え?あ、それは…どういう…」
町田は、中河原の瞳に見つめられて、一瞬、思考を失いそうになった。
「俺、好みハッキリしてるから」
中河原は仕事をしているような厳しい口調になった。
「あ、はい…」
やっぱりオッサンはダメか、と町田は少し落ち込む。
「ちょっと脱いでみて。上だけでいいから」
「え?今ですか?」
「うん」
厳しい口調は、変わることがなく、町田は仕方なく食べかけのシュークリームを置いて、スーツのジャケットを脱いだ。
ネクタイを外し、シャツのボタンを外していると、中河原が手を伸ばしてきた。
「中、なんにも着てないん?」
「あ、はい…すいません、急いで着替えたもので」
するりとシャツの中に中河原の手が入ってきた。
ゆっくりと撫でまわされる。
「あ、あの……」
町田は、緊張する。
「ええやん…いい体してる」
中河原は、上目使いで町田のことを見てきた。
「あ、ありがとうございます…」
町田は、心からホッとした。
中河原はそのままボタンを外し、町田を上半身裸にした。
「合格やな」
そう言って中河原は、町田の胸にチュッとキスをする。
「もう着てもいいでー」
あつさりと身体を離すと中河原は二つ目のシュークリームに手を伸ばす。
町田は呆気に取られたまま、シャツを着てネクタイを締めた。
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