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そろそろお開きにしようかとみんなで話していると、町田のスマートフォンが振動した。
嫌な予感を感じながら、胸ポケットから取り出すと、案の定、中河原からの着信だった。
慌てて個室の扉を開け、外に向かいながら応答する。
「はい!町田です」
『あ、やっと出た。中河原やけど』
「すいません」
町田は、店の外に出る。
『この前、山川さんに頼まれてた『ひなたぼっこ』の見開き4ページ。出来たんやけど』
中河原は、珍しく真面目に話し出した。
『急いでたみたいやからやったったで』
「ありがとうございます!すぐに取りに伺います」
町田は、頭を下げる。
『はーい、よろしく』
そう言って電話が切れた。
「中河原先生ですか?」
すぐ後ろに山川が来ていて、尋ねる。
「あ、うん『ひなたぼっこ』の見開き、描いてくれたみたい」
「おお!早っ!良かったですね」
中河原の描く絵は、とても人気があり、幼児雑誌『ひなたぼっこ』の売れ行きにも影響する。
来年はカレンダーも出そう、という話もあった。
「今から取りに行ってくる。今日は、ありがとう。お疲れ様」
「お疲れ様でしたー」
四人に軽く手を上げて、町田はタクシーを捕まえる。
すぐに中河原のマンションに向かった。
途中で思い出して、まだ開いていたケーキ屋で、手土産にケーキとシュークリームを買う。
ちゃんと対応すれば、ちゃんとやってくれる人なんだな、と少しホッとしていた。
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