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生活を守る
内見を終え、その一軒と契約を終えた俊介が不動産屋を出ると、先ほどの紳士が目の前に立っていたので、俊介は深いため息をついた。
「ノア様、お迎えにあがりました。」
俊介はスマホを取り出した。
この近辺の交番を検索すると、少し先にあることがわかった。
俊介は紳士に視線を向けることなく交番の方に歩き始めた。
「ノア様、お待ちください。
今は記憶がなくてご理解いただけないかもしれませんが、
おこしいただいたら記憶も戻りますので、どうか。」
この紳士の話が仮に事実であったとしても、なぜ今の生活を捨ててまで危険に身をさらさないといけないのか。
紳士の一方的な話に、俊介は内心怒り心頭だった。
早歩きをした甲斐もあり、すぐに交番が見えてきた。
追いすがる紳士と共に、俊介は交番に飛び込んだ。
「すみません、助けてください。不審者につきまとわれてます。」
「ノア様、待ってください!私はそんな者ではありません。記憶が戻れば!」
警官は一見まともに見える紳士が不審者ということに戸惑ったようだが、発言に違和感を覚えたのか、俊介に近寄らないように動きを拘束した。
その隙に、俊介は警官の静止を無視して交番を後にして走り去った。
そして何度も振り返り、紳士がついてきていないことを確認しながら帰宅した。
今後、またあの紳士が現れたら、交番に駆け込まないといけないかと思うと俊介からは深いため息がでた。
引っ越し先でもやはりあまり自宅からは出ないようにしようと強く思った。
完
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