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※残酷描写、女性との性描写あります。お気をつけください。
そうして美しい化生のような男は見た目よりも豪快に、ははは……と笑ってみせた。
「あんた、情けないな」
「ああ……自分でも嫌になる程に……」
「だが、その正直に吐露する心もち、嫌いではないよ。それに……義兄様(あにさま)がこうしてここにいるのも俺のせいだ。ふん……斬る気が失せた」
「そんな……」
「あんたは、俺の首を持って国へ帰りたいか」
「も、勿論だ」
「そうかい。そうなら持たしてやろう」
「なんだって」
「今は、夏だが……そうさなあ。来年の冬まで……なあ……義兄様よ。来年の冬まで俺は生きているかどうか解らん。俺は肺をやられているようだよ。どうもいけないようだ。俺はあんたも知っているように大層な人殺しだ。俺が自分の父を殺したのはな。千鶴と男女の関係を持ったからよ。それも、何度も何度も」
「なんだって、まさか」
「本当の事さ。俺は剣が大好きなので、女人は好かなかった。何故なら穢(けが)れるからな。男は陽の気、女は陰の気だ。女を抱くと、どうも剣が鈍るような気がして俺は女子を抱くのは敬遠していた。それだが子供は作らねばならん。それで渋々女房を娶った。俺はおざなりに何回か抱いたが、千鶴は満足しないようだった。世継ぎを作らねば、と俺にせがむ。せがめばせがむほど、俺は千鶴が煙たくなった。それだが……ある日からぱったりと、せがまなくなった。俺は嗚呼清々したと思っていたが……どうもおかしい。何がおかしいか。親父殿と千鶴の交わす目線が尋常ではない。そういえば、めっきり親父が道場に現れなくなったと思っていたが……と思いついた所で居ても立っても居られなくなった。ある日、いつもどおりに道場へ行く振りをして家に潜んでおったらな」
そう言ってにやり、と馬杉は凄みのある表情で笑った。
「俺が出て行ったとみると、あの畜生どもめ。すぐにまぐわいやがった。エエ、あんなもの、人間同士の物ではない。犬や狐狸でも出来ようか。朝餉を済ますか済まさんか。それほどでも待てぬというように、食っていた飯茶碗を放り出して親父が給仕をする千鶴に挑みかかると、千鶴も裾をからげて、ぼぼ(女陰)を見せつけおった。それでをんなの癖に自分で膝を抱えてな……「おとさん、おとさん。どうかずぶりとやっておくれな、ああ、あの人が飯を食っているのがどんなに遅く感じたことか。早く去(い)ぬれ、去(い)ぬれとそればかり念じておりました」と、こう言えば、親父は目を細めながら萎びた陰茎を擦りながら千鶴のぼぼへ突き刺しこう言うのだ。「ああ、不出来な愚息で悪かった。ああ……あいつさえいなければのう……千鶴や千鶴や……儂の嫁になってしまえばよい」。親が息子の嫁を寝取り、あまつさえ俺を不要のもののように蔑むとは許せん、と思った。だが、一度では決めつけられん。一度は許してやろうと思った。だから何度か潜んでみた。すると何度目でもな……あいつらはまぐわっていた。本当に卑しい畜生だったわい」
「それで、殺したのか」
「そこまでなら、許せたかもしれん。だがな……千鶴がな……」
孕んだ。
馬杉は淡々と言った。
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