幼なじみ

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僕の髪は全体的に長めだ。 中学まではそれでも前髪は普通だったのだけど、高校では前髪も長めにしてきっちりおでこを隠し、顔が半分見えないようにしていた。 後ろが長いのは単に襟元からうなじの噛み跡が見えないようにしていたためだけど、前髪は暁の希望だ。中学と違ってずっと傍にいられないから、その間に変な虫がつかないようにと思ったらしいのだけど、顔なんて隠さなくても誰も僕に興味なんて持たないよ、と僕は正直思っている。 飛鳥だって『一目惚れ』じゃなくて『匂い惚れ』だって言ってたし。 だけど眼鏡と一緒で、それで暁が安心するなら、と高校では前髪で顔を隠していた。 なのに最後の仕上げのスプレーを取られてしまった。 「どうしたの?」 背の高さに比例して大きな暁の手は、その大きさに反して以外と器用だ。 僕がせっかく下ろした前髪をブラシで横に流すと軽くスプレーして形をキープすると、アメピンで留めていく。 前髪を伸ばし始めてから邪魔なので、家の中ではピンで留めていた。だから普通に洗面台の棚には僕のアメピンが常備されているのだけど・・・。 急にどうしたんだろう・・・? 鏡を見ながらどんどん僕の髪をセットしていき、満足したのかやっと僕から離れた。 出来上がった鏡の中の僕の顔は、思いっきり出ていた。 あれ?隠さなくていいの? そう思いながら眼鏡を取ろうとしたら、 「もうかけなくていいよ」 とまた手を止められた。 「帰りに美容院によって髪切ってもらおう。後も」 え? 「うなじ見えちゃうよ?」 「いいよ。これから暑くなっていくし、体育でずっとジャージも辛いだろ?」 今まで体育の時は必ずジャージを着て、長い襟足でさらに隠してうなじが見えないようにしていた。それは学校側と相談して番になったことを隠すためだったんだけど、実は高校では隠すか隠さないかは自分たちで決めていいと言われていたのだ。それをいらない注目を浴びるのも嫌だと、僕達は隠すことにしたのだけど・・・。 どうしたんだろう・・・? 別に知らせて歩くわけじゃないけど、僕はてっきり自分の番を人目に晒さず囲っていたいアルファの習性なのかと思って、外見に関しては暁の希望通りにしてきたのだけど・・・。 暁がそれを望むなら、僕はそれに従うまでだ。
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