幼なじみ

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学校まで永遠に続くのかと思うほど長く感じた道のりもようやく終わり、やっと着いたと思ったら、そのまま暁は僕の隣を歩き続ける。 「暁の教室、こっちじゃないよ?」 そもそも階が違う。なのにずっと離れない。 「ヒナの教室まで送るよ」 え?! 暁が普通の僕の教室まで? 特進の生徒が普通のクラスが入る階に来ること自体が珍しいのに、その端っこの僕の教室まで来るの? しかも超有名なアルファ様が・・・。 入学式からすぐ休んでしまった僕には、実は飛鳥以外話す人はいなかった。飛鳥もお昼限定だったし・・・。しかも今まで顔を隠して目立たないようにしていたから、僕の存在自体あまり知られていなかったのに・・・。 ものすごく見られてる・・・。 もう遠慮も何も無い。みんな超ガン見だ。 僕の人生、こんなに注目されたことがあっただろうか・・・。 暁の隣がこんな僕でごめんなさいっ。 と思わず心の中で謝ってしまったそのとき、ようやく僕の教室に到着した。 「じゃあヒナ、帰りも来るからここで待ってて」 帰りも来るの? 内心引き攣るも、僕は笑顔で返した。 「分かった、待ってるね。送ってくれてありがとう」 そんな僕に少し笑って頭をぽんぽんすると、暁はちらっと教室の中を見回した。その時暁からアルファの威圧が放たれる。でもほんの一瞬だった。 あれ?いま威嚇した? あまりに一瞬の出来事だったので、気のせいだったかな?と思いつつ、自分の教室に向かう暁を見送り、いざ席に着くも、その異様な雰囲気にやっぱり威嚇したんだと確信した。 僕ずっとここで過ごすのに・・・。 そもそも発情期欠席で1週間休んだ後の登校ってだけでも居ずらいのに、暁の登場でさらに空気がおかしい。 ものすごく視線を感じる。 気になるけど聞けない。そんな視線が四方八方から突き刺さる。 しばらくの辛抱だ。時間が経てば、きっとこれが普通になる。 そう言い聞かせていると、誰かが隣に立った。 「おはよう」 飛鳥だった。 飛鳥はいつものように笑って僕を見ている。なんにもなかったかのように。 「おはよう。あの・・・今日もお昼一緒にしていい?」 気持ちが先走ってしまった僕の唐突な申し出に、飛鳥は笑って頷いた。 「いいよ。オレの方こそ一緒にいていいのかな?」 それはきっと暁に対してだ。 「大丈夫。ちゃんと言ってきたから」 「じゃあまた昼に」 「うん」 そう言って飛鳥は自分の席に戻っていった。 ああ、やっぱりどきどきする。飛鳥の傍にいると、僕の胸は途端に早くなる。
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