幼なじみ

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その笑顔が眩しい。 「僕も、飛鳥に救われたんだ」 僕も甘いコーヒーを一口飲んだ。 「入学早々1週間も休んじゃって、もう絶対にクラスに馴染めないと思ってたんだ。で、案の定、誰も僕に話しかけないし、見てもくれない。初めてずっと一緒だった暁と別れて一人になって、友達も作ることが出来ない自分に自信を無くしてたんだ。そんな時に飛鳥に声をかけられて、すごく嬉しかった」 本当はアルファに近づいちゃいけなかったのに、飛鳥とのお昼は楽しかった。 「僕の方こそ、ありがとう」 僕も笑って飛鳥に言えた。すると飛鳥は視線を落として、少し寂しそうに笑った。 「・・・もっと早くに陽向と出会いたかったな」 その小さな呟きを、僕は聞こえなかった事にして胸の中にそっとしまった。 もしも飛鳥との出会いが暁と番になる前だったとしても、その時にはまだ僕も飛鳥も第二性に目覚めていなかったし、暁とすでにキスして触りっこしてた。さらにその前になると、僕はまるっきり子供で友達以上の感情は当然持たなかっただろう。 きっと、どこで会っても飛鳥とはそういう関係にはならなかっただろう。 そう思うと、暁はいつから僕のことを番にしようと思ってたんだろう? 初めて発情期になった時はことの最中で、そのままうなじを噛まれてしまった。もし最中でなくても、暁とはもうそういうことをする関係だったから、なんの抵抗もなく身体を繋げただろう。 ・・・・・・・・・。 すでにあのキスの時から、僕の運命は決まっていた?いや、暁が隣に住んでいた時から・・・違うな、母親同士が話し合って隣合ってたんだから、住む前・・・母親同士が友達になった時から・・・? 暁とのきっかけを考えていたら、どんどん遡ってしまった。 僕と暁の運命の始まりはいつだろう?と考え込んでいたら、いつの間にか京兄が傍にいて僕の頭にポンと手を置いた。 「まあ、お前の旦那はスーパーアルファってことだ。木村くんも相手が悪かったということで」 と京兄が言ったところでチャイムがなった。 京兄、僕の頭の中を覗いたの?そんなことを思いながら僕は京兄と飛鳥から空のお弁当箱を受け取った。 「そのまま返してくれていいよ。まとめて一緒に洗うから」 その言葉に京兄は大きくなったな、と僕の頭をグリグリし、飛鳥は小さくありがとう、と言った。 「お粗末さまでした」 空っぽになったお弁当箱ってちょっとうれしいよね。 こうして僕達はお昼を終え、教室に戻った。
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