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『可能にしてしまったんだよ。なんとしてもこの世界から【死】というものを消し去りたかったからね。
僕は子供の頃にお母さんや友達を失くした。凄く悲しかったよ。これから先、どう生きていけばいいのかわからなくなった。
そして、これから先も大切な誰かが死ぬと考えたら怖くて怖くて仕方がなかったんだ。だから、僕は考えた。【誰も死なない世界】にしてしまえばいいと』
俺は驚愕した。まだ本当に不老不死の世界になったのかはわからないが、実現するのも難しいとされていることを、子供の頃からずっと願い続けてやり遂げるなんて……。
このメッセージから大和の不老不死の世界を作ることへの強い執念を感じた。
『もし、それが本当なら俺はお前に感謝するよ。俺もそう思っているからな。身近な人の死なんて想像したくもねえ。
だが、お前のその考えって人に押し付けて良いものなのか?』
『命の儚さだとか尊さがどうとかっていう考え方をする人のことだろう? 悪いけどその人達のことを考える余裕なんて僕には無かったんだ。
僕は早くこの夢を実現したくて堪らなかったんだ。モタモタしていればおじいちゃんやおばあちゃん、父さんや友達だって失ってしまうことになる。なりふり構ってなんかいられないんだ』
メッセージから伝わってくる大和の必死さ。俺はしばらく考えてから返信した。
『お前の思いはわかった。お前が世間からどんな批判を受けようと、俺はお前の味方でいてやるよ』
『ありがとう』
『お前はこれからどうするんだ? 今回のことは自分がやったことだと明かすのか、それとも隠し通すのか?』
『明かすつもりさ。それで僕が罪に問われても構わない。それだけの過ちを犯したのだから』
『そうか、せっかく再会出来たってのにまた会えなくなるかもしれないんだな……』
『寂しいけど仕方ないよ。じゃあ、また』
『じゃ』
こうして、俺達のやり取りは終わった。
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