薄墨色の記憶

ショーイチちゃんＴＶ出演

　次の週、ショーイチちゃんのテレビ出演を家族中で楽しんだ。

　息子さんと２人で唄う歌はとても上手で、親子エピソードも心にジーンと沁みる内容だった。１０分程だったが、私の一生忘れない記憶になるだろうと思った。
　次の日も学校に行って、かよちゃんとテレビの話をして盛り上がった。

　そしてそのまま、ショーイチちゃんは戻ってこなかった。

　１０月まで、書道教室は水曜日も土曜日も生徒は私一人だった。
　先生とのマンツーマンで月謝の元は十分取れたと思うけど、ほかの生徒もショーイチちゃんもいない教室はひどく退屈だった。

　でも小学１年生のアヤコちゃんが来てくれてからは楽しかった。アヤコちゃんの先輩として世話を焼いた。
　アヤコちゃんはショートカットで目がクリクリしていて、素直で可愛かった。

　ショーイチちゃんがいなくなって４か月も経つと、東京であの俳優の息子さんとリッチに暮らしているんだろう、と諦めがついた。

　しかし、年の瀬が押し迫った頃にクラスメートの加藤から飛んでもないことを聞かされた。それは掃除の時間だった。
「前さぁ、スーパーマーケットのベンチにおっさんがいたじゃん。あいつ、東京で殺されたんだってよ」