0人が本棚に入れています
本棚に追加
ショーイチちゃんは?
クラス中が聞いていたと思うけど、関心があったのは、私とかよちゃんだけだった。
「加藤、給食のフルーツあげるから詳しく聞かせて!」とお願いしたら、快く知っている限りを教えてくれた。
加藤の父親が新聞で記事を見つけたこと。記事は7月だったこと。おっさんは刺殺されていたこと。おっさんは東京のどこかの川に捨てられていたこと。
加藤の情報は4点だけで、思った以上に少なかった。それに7月の事を、12月になって思い出して言うのかと思った。
給食のフルーツをくれてやるには惜しかったが、約束してしまったからしょうがない。明日のフルーツは加藤の物になる。
かよちゃんと下校して、途中で公園に寄った。
ブランコに乗りながら、かよちゃんはショーイチちゃんの殺害理由と犯人を聞かせてくれた。午後の授業はそっちのけで、推理していたらしい。
「本当にそれって、あのショーイチちゃんのことかな?」
私はショーイチちゃんが生きているような気がしていた。
ブランコの鎖が冷たくて、握る手を痛くした。雨交じりの雪が降ってくる。体が濡れる前にかよちゃんと解散した。
ミゾレの中を手を前後いっぱいに振って走りながら、ショーイチちゃんらしき人が川で死んでいたことを思った。
川の水と黄リンが反応して、その人の体も青白く燃えたのだろうか? もしそうだったらすごくきれいだったに違いない。
明日の水曜日で約6年間通った書道の稽古が最後になる。
そして、最後の書道の稽古は何事もなく終わった。
最初のコメントを投稿しよう!