かよちゃん

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かよちゃん

 合点がいったようで「ショドウはオシュウジともいうのよ。筆で字を書くの。練習すれば練習するほど字が上手くなるのよ」とざっくりと教えてくれる。 「上がって見て行ってください」  ワンピースの女性は私たちを部屋に招き入れた。  プレハブ小屋は外見よりも意外と広かった。子供が5人いた。 その内の一人は同じクラスの子だった。 「あっ、かよちゃん!」 「あっ、たっこちゃん!オシュウジ、やるの?」 「うん!」  よく考えていなかったけど、突然のノリでやることになった。  もう後戻りはできなくて、この日はこのままお教室の道具を借りて、人生初めてのショドウの稽古をした。    水曜日と土曜日の稽古を3年間、毎週続けて、私は小学校4年生になった。 私の字は学年で2番目に上手くなった。1番はかよちゃんだ。  かよちゃんは墨をたっぷりと含んだ筆を使ってボチャっと字を書く。上手いだけの字ではなく、囚われない自由さとパワー、若さの張り裂けを感じる字だ。
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