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ショーイチちゃん1
一方、私の字は筆に墨をたっぷり付けているにもかかわらずに、細く角ばっている。整いを優先させた神経質そうな字だ。
私もかよちゃんみたいな雄大な字を書きたいと思ったが、できない。なぜだろう? かよちゃんの書き方の真似をしてもできない。悔しかった。
来週から夏休みという水曜日に書道教室のドアを開けると、見たことのあるおっさんが奥の壁際に座っていた。
それがショーイチちゃんだ。
ショーイチちゃんはここら辺では有名人だった。
ほぼ毎日、近所のスーパーマーケットの軒下のベンチに座って本を読んでいて、無給で駐車場のカゴとカートを片付けている。だからスーパーマーケットの従業員に大切にされていて、飲み物と弁当なんかをお供えのようにもらっているという近所の噂だ。
私たち小学生はショーイチちゃんのことを、気持ち悪いおっさんと思っていたし、馬鹿にもしていた。
そのショーイチちゃんが書道教室にいるなんて信じられなかった。私はおっさんから目をそらすこともできずに、何も言うこともできずに、ただ固まった。
「こんにちは」ショーイチちゃんはデレっと笑って言った。
「こ こ こ んちわ」
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