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ショーイチちゃん2
何とか挨拶をして、正気に戻る。
乱暴に靴を脱いで、右手にある先生の自室へと続く扉の方へ走る。慌てて扉を少し開けて「せんせー!」と叫ぶ。
勢いあまって扉に前歯をぶつけた。いたたたた。
先生は何事かと飛び出てきた。
「あ、あっ」とショーイチちゃんを指さした。
「たっこちゃん、人を指さしちゃダメでしょ。会うのは初めてね。こちらは田所正一さん。今月からここの生徒さんになりました。たっこちゃんの後輩だから、いろいろと教えてあげてね」
ウゲゲ。おっさんの先輩?マジか。
ショーイチちゃんの事を、クラスメートに根掘り葉掘りと聞かれる様子が想像できた。
面倒臭そうでガックリと肩を落とした。
それからショーイチちゃんがほとんどの時間を書道教室で過ごすようになるまで、そう時間はかからなかった。
意外や意外、ショーイチちゃんは文化的で魅力的な大人だった。
ショーイチちゃんは字も絵もとても上手だった。特に鳥の絵はプロ級だった。私たちはショーイチちゃんにねだって鳥を描いてもらったり、描き方を教えてもらったりした。
そして月に一度位、東京大空襲の話してくれた。田所正一、19歳の夏の話しだ。
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