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東京大空襲2
私は、本当だ本当だと賛同しながら、瓦礫だらけの河川敷に血を流して折り重なるように倒れる人々と青い炎、そのコントラストに惨たらしいけど幻想的で鳥肌が立つような魅力を感じた。
そして、両親からは聞くことができないような話、例えば、都会の事や絵画、文学、政治、そんなことを語るショーイチちゃんは、書道教室の人気者になった。
5年生になると先生の代わりにショーイチちゃんが書道の教授をする日もあるようになった。先生がいないショーイチちゃんだけの教授を受けた日の私は、夕飯の時に饒舌になった。
土砂降りの水曜日、書道教室のドアを開けると誰もいなかった。先生の文机の上に、アジサイが一輪挿してある。
「こんにちわー」と声を張り上げる。
先生の自室の方からガタガタっと音がして、先生がカーディガンの襟もとを直しながら扉を開けて出てきた。
「みんなは?」
「かよちゃんはお休みですって。ほかの子たちからは連絡がないわ。」先生は俯き、髪を手櫛で整えて、顔の横に結い直しながら答えた。顔がほんのり赤かった。
「ショーイチちゃんは?」
「うん? さぁ、始めましょうか」
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