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書道教室1
何だか、はぐらかされた気がした。
先生はショーイチちゃんと何かあったのだろうかと思ったが、聞いてはいけない気がした。
硯と文鎮、下敷きをバッグから取り出す。
硯に水を注ぎ、墨をする。新鮮な墨の匂いがした。墨を擦るシュシュシュという音とトタン屋根を打つ雨音が聞こえる。ただ書道に向き合った。
セミの鳴き声がうるさい。正座をする膝裏にあせもができている。
水曜日は完全にショーイチちゃんが教える日となった。そして何故か生徒の数が減りだした。
かよちゃんも辞めてしまった。10月から違う書道教室に通い始めるらしい。
年明けになると、水曜日はショーイチちゃんを独り占めできるようになった。水曜日の稽古の時間の半分は書道をして、残りの半分は本か詩集を読んでもらった。
ショーイチちゃんの朗読を聞くときは、いつも胡坐をかいたショーイチちゃんの足の間に座る。ショーイチちゃんは私の後ろから手を伸ばして本を持つ。
そうすると二人で本を見ることができるからだ。
いつからか分からないが、どちらからともなくこの姿勢になった。
この日は芥川龍之介の『羅生門』を読んでくれた。
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