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書道教室2
羅生門をリズミカルに読み上げるショーイチちゃんの声に聞き惚れた。
ストーリーは児童書とは違って誰も幸せにはならなかったけど、好みだった。
「この老婆は俺の様だな」
「何で?」言いながら、ショーイチちゃんの顔が見えるように身をよじる。ハッとする。もしかして空襲の犠牲者から何か盗んだのか? まさか、そんなことはしないよね。心臓が強く打った。そんなこと、やったの?
ショーイチちゃんは何も言わないで、手作りだという、きな粉飴を人差し指と親指でつまんで目の前に持ってくる。
私はそれをパクと食べて、きな粉の付いたショーイチちゃんの指をいつものように舐めた。
家で書道教室の荷物の準備をしていた。
歩いて10分程で着くからセーターにマフラーだけを身に着けて、バッグを持って家を出ようとした時に母親に呼び止められる。
「たっこちゃん、4月には6年生になって勉強も忙しいから、3月末でお習字を辞めない?」
突然の申し出に驚いたし、今更? と少し遅いような気がした。生徒のほとんどは辞めてしまっていた。
「とりあえずケジメとして6年の12月末まで、今の教室でやりたいと思ってる」
「そう。分かったわ」
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