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ピンポーン、とインターホンがなった。
浅い眠りに落ちていた私はその音に反射的に起き上がり、気だるい体を無理やり動かしてドアへと向かう。もはや習慣となってるから慣れたように鍵を開けるけど、本心は全く違う。
全くもってドアの前に立っているであろう人物を追い返そうと毎回思うくせに、彼は私が朝に弱いことを知ってるから、わざとこの時間帯を狙ってくる。ドアを開いて、そのミルクティー色が目に飛び込んだ時にやっと思うのだ。ああ、今日もやってしまったと。
「おはよ、琥珀」
「燐くん……」
「うわ、また男連れ込んでる。
この靴は…烏養さんだな。
セフレは精算するって、兄貴にも言ってたくせに」
「だってまた、寂しくなっちゃったんだもん…」
「だから、俺がいるって、」
「燐くんには間違っても手を出さないって決めてる……」
「チッ」
思いっきり大きな舌打ちをして、燐くんは私の手を取り堂々とした足取りで部屋の奥へ進んでいく。まるで家主のようだけど、私は特に憤慨することもなく目を擦りながら寝ぼけ眼で彼に手を引かれるままついていった。
「……烏養さん」
「……は!今何時!?
え!?燐くん!?何故ここに!!」
「そりゃ琥珀の家だからでしょうよ……」
「あー、燐くん来る前には帰ろうかと思ってたのに。また傷つけてごめんね」
「……殺す」
「最近の若者は物騒だねー」
そう言いながらも大人は烏養さんは、快適な眠りを中断されたのにも関わらず隠すことも無く、堂々と寝間着からかけてあったスーツに着替えた。スイッチが入ったのか準備が出来た彼はすっかりお仕事モードで、デキる男感が凄まじい。
……それにしても昨夜も散々見たけど、朝に見てもやっぱりいい体してるなあ。
「じゃあね琥珀。また今度」
「うん…休日出勤頑張ってね…」
「昨日無理させちゃったから琥珀はちゃんと休んでね」
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