0人が本棚に入れています
本棚に追加
やがて雨が止んだ。
雨の重みのせいで、果物が数個木の下に落ちていた。私はそれを丁寧に拾い集める。
街に売りに行くんだ。
この木の果物は特別おいしいわけではないが、癖がなく、とても食べやすいと評判だった。
ジャムにすると少しだけ甘みがたつので、私は集めた数個を売るために、そして残りはジャムにするために、かごの中に取っておいた。
かごは小さくすぐにいっぱいになってしまうので、たくさん売れたら帰りに買ってこよう。そうこころに決めた。
「よし」
私はひとり声を出すと、かごを背負い、歩き出した。少し先で振り返り、「いってきます」と木に声をかけた。
売れ行きはなかなか好調で、自分が思ったよりも大きなかごを買うことができた。
それに満足し、軽くなったかごと足取りで私は家路についた。
「ただいま」
そう私の木に声をかけると、さらさらと風が葉を揺らした。たぶん、返事をしているのだろう。
月明かりが優しく私たちを照らしていた。
最初のコメントを投稿しよう!