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子どもは宝なので、お隣さんの木の周りにはいつもたくさんの人が集まっていた。お隣さんのように子どもがいる人が多かった。
私がひとり木を削っていると、気が付いた時にはお隣にはたくさんの人が集まっていた。
そして思い思いにおしゃべりを楽しんでいる。
「ほら、私の木って本当に大きいでしょう。」
お隣さんが得意げに話し出す。
「背は高いし、枝も広くって。雨に濡れないところがこんなに広いのなんて、私の木くらいですよ。それに果物もおいしくって、本当に非の打ち所がないっていうのはこういうことを言うんですよ」
お隣さんの話を周りの人たちはうんうんとうなずきながら聞いていた。
「本当に、素晴らしい木ですわ!」
「大きくて、枝も広くって、生活空間が広いのって本当に素敵」
「本当に…私もそんな木に住みたいです!」
口々にみんながそういった。
お隣さんの木は確かに背も高く、雨が降り込まないように、葉がびっしりと空を覆っていた。枝は広くて、どこまでも広がっているように見える。
でも。
ふいに自分の木を見上げた。
背は高くないし、雨も降り込んでくるし、枝の広がりも全然ない。
けれど、葉の隙間からは木漏れ日が差し込んでくる。午後のお昼寝の時間には気持ちよさが倍増する。
「それに、幹は太いし、根もしっかりしているから、きっと嵐が来たって倒れたりしないよね。」
私はそんな木が好きだった。
そんな私の言葉に、相変わらずさらさらという葉のこすれる音で返事をして見せた。無口な木なんだわ。私は勝手にそう思っている。
お隣さんの木はお隣さんの会話に合わせて色々な音を発している。でも私にはそれが少しだけ…うるさい。
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